初心者の方から上級者の方までご満足いただけるよう、タックルやジグの選び方から、各海域での釣り方、釣果を上げるためのコツまで、総合的に詳しく解説します。
ジギング完全攻略ガイド
🎣1. ジギングとは?基本を理解しよう
ジギングは、メタルジグ(金属製の疑似餌)を使い、ロッドを上下に動かす(シャクる、ジャークする)ことでジグを操作し、魚を誘う釣り方です。このアクションによって、ジグが小魚が逃げ惑ったり弱ったりしている様子を演出し、大型のフィッシュイーターの捕食本能を刺激します。
主に船から行う「オフショアジギング」と、堤防や磯など陸から行う「ショアジギング」に大別されますが、ここでは船からのオフショアジギングを中心に解説します。
ジギングのターゲット
ジギングの魅力は、ターゲット魚種の豊富さです。
- 青物: ジギングの代表的なターゲットで、ブリ、ヒラマサ、カンパチが「青物御三家」と呼ばれます。その他、サワラ、シイラ、カツオ、マグロ類も狙えます。
- 根魚: 岩礁帯の海底を狙えば、カサゴ、キジハタ、マハタなどの高級魚が釣れます。
- 底物・砂物: 砂地の海底では、アマダイ、ヒラメ、マゴチなどもターゲットになります。
- その他: タチウオやマダイ、さらにはアカムツ(ノドグロ)やキンメダイなどの深海魚まで、肉食性の魚のほとんどがジギングで狙えます。
⚙️2. タックル(道具)の選び方
タックル選びは釣果を左右する重要な要素です。釣りをする海域や船の流し方、対象魚によって最適なタックルは異なりますので、釣行前に船長や地元の釣具店に確認するのが最も確実です。
船の流し方とタックルの関係
オフショアジギングの船の流し方は主に2種類あり、どちらの流し方かによって使用するタックルが変わります。
- バーチカルジギング(タテの釣り): 船首を風上に向けて船を立て、ラインがほぼ垂直になるように流す方法です。この場合はベイトタックルが基本となります。スロージギングやタチウオジギングも主にこのスタイルです。
- ドテラ流し(ナナメの釣り): 船を風や潮に任せて横向きに流す方法です。ラインが斜めに出ていくため、広範囲を探ることができ、この場合はスピニングタックルが有利です。青物ジギングではこの流し方が多いです。
「初心者はスピニング」という情報を目にすることがありますが、これは必ずしも正しくありません。海域と船の流し方に合わせて選ぶことが重要です。
ロッド(竿)
- 硬さ(パワー): 魚の大きさではなく、使用するメタルジグの重さに合わせるのが基本です。例えば、150gのジグをメインに使うなら、適合ウェイトが150g前後のロッドを選びます。硬すぎるロッドはジグの動きを損ない、釣果が落ちる原因になるので注意が必要です。
- 長さ: 船上での取り回しを考慮し、6フィート(約1.8m)前後が主流です。
- 調子(テーパー): ジグをシャクリやすいようにティップ(竿先)にハリがあり、魚の引きをいなせるようにバット(根本)までしっかり曲がるレギュラーテーパーのものが一般的です。
リール
- スピニングリール: ドテラ流しの青物ジギングで多用されます。ドラグ性能が滑らかで、青物の強烈な引きに対応しやすいのがメリットです。番手は、PEライン3~4号を300~400m巻けるサイズが基準となり、シマノなら6000~8000番、ダイワなら4500~5000番が目安です。
- ベイトリール: バーチカルジギングやスロージギングで使われます。巻き上げ力が強く、同じタナを繰り返し探る際に手返しが良いのが特徴です。
ラインシステム(糸)
ジギングでは、PEライン(メインライン)とショックリーダーを結ぶのが基本です。
- メインライン(PEライン): 伸びが少なく高感度なPEラインが必須です。太さ(号数)は、船宿によって指定されていることが多いので、必ず事前に確認してください。同船者と太さが違うとオマツリ(糸絡み)の原因になります。糸が切れた場合に備え、水深の倍以上の長さを巻いておくと安心です。
- ショックリーダー: 摩擦に弱いPEラインを保護するために必須です。太さはPEラインの3~4倍を目安にします。長さは3ヒロ(約4.5m)以上結んでおくと良いでしょう。
- 結束方法(ノット): PEラインとリーダーの結束は、強度が高い「摩擦系ノット」が必須です。FGノットやPRノットを必ず習得しましょう。揺れる船上でも素早く確実に結べるよう、自宅で十分に練習しておくことが釣果に繋がります。
🪝3. メタルジグとフックの選び方
メタルジグ
- ウエイト(重さ): 最も重要な要素です。水深や潮の流れによって適切な重さが変わるため、必ず船長に確認してください。軽すぎると底が取れず、重すぎると魚の食いが悪くなることがあります。オマツリ防止のため、船宿でウエイトが指定されていることも多いです。
- シルエット(形状): 大きく分けてロング(セミロング)とショートの2種類があります。ロングジグは水の抵抗が少なく、速く沈み、大きくスライドするのが特徴です。ショートジグは、イワシなどの小さなベイトを捕食している時に有効です。
- カラー: まずはシルバー系とゴールド系の2種類を軸に揃えましょう。船長が最近のアタリカラーを知っているので、聞いてから買うのが一番確実です。カラーをたくさん揃えるよりも、指示されたウエイトのジグを複数用意する方が釣果に結びつきやすいです。
フックセッティング
オフショアジギングでは、ジグに「アシストフック」を取り付けるのが一般的です。対象魚や釣り方によってセッティングが異なります。
- 青物狙い: ベイトの頭を狙って捕食する習性があるため、フロント(ジグの頭側)にのみフックを付けるのが基本です。フックがジグの全長の1/3あたりにくる長さがベストです。
- スロージギング・根魚狙い: フォール中のアタリを獲るため、フロントとリア(ジグの尾側)の両方にフックを取り付けます。
- タチウオ狙い: 歯が鋭いため、ワイヤー入りのアシストフックを使用します。フォール中のバイトが多いため、リアフックは必須です。
フックやジグは、コンビリング(ソリッドリングとスプリットリング)を介してリーダーと接続します。この作業にはスプリットリングプライヤーが必須です。
🎯4. 実践!ジギングの釣り方と誘い方(シャクリ方)
基本的な流れ
- 投入・底取り: 船長の合図でジグを投入します。スプールに軽く指を添えてサミング(糸の出を調整)しながら落とし、オマツリを防ぎます。着底したら、根掛かりを避けるためすぐに巻き上げを開始しましょう。
- 誘い: 船長がアナウンスする「指示ダナ(魚がいる水深)」を中心にシャクります。アタリがなければ再度底を取り、誘い直します。
- 回収&再投入: 何度か底を取り直すとラインが斜めになり、オマツリや根掛かりの原因になります。こまめにジグを回収し、再投入することが重要です。
基本のシャクリ方(ジャーク)
ジャークには無数のパターンがありますが、まずは基本となるものを覚えましょう。
- ワンピッチジャーク: ジギングの最も基本的なアクションです。ロッドを1回シャクる間にリールを1回転させる動作をリズミカルに繰り返します。ロッドを振り上げる時にハンドルも上に、下げる時にハンドルも下に来るように動かすのがコツです。広い層をテンポよく探るのに適しています。
- スローピッチジャーク(スロージギング): ロッドの反発力を利用してジグを動かし、フォール(沈下)で食わせることを重視した釣り方です。少ない移動距離でじっくりアピールでき、弱ったベイトを演出できます。根魚や低活性の青物に特に有効です。
- コンビネーションジャーク: ワンピッチや速巻き、ロングジャークなどを組み合わせた不規則なアクションです。速巻きで魚の活性を上げてから、ジャークで食わせの間を作るイメージで、青物やサワラなど遊泳力の高い魚に効果的です。
- ただ巻き: シャクらずに一定の速度で巻くだけのアクションですが、意外にも効果的な場合があります。特に、魚がトリッキーな動きを追いきれない状況や、タチウオのように直線的な動きのベイトを捕食している場合に有効です。
各魚種・海域による釣り方のポイント
- 青物狙い: 漁礁や根周り、瀬の周辺が主なポイントです。ワンピッチジャークやコンビネーションジャークで広範囲をスピーディーに探るのが基本です。魚は落ちていくものに強く反応するため、フォール中のアタリにも注意しましょう。
- 根魚狙い: ボトム(海底)付近をじっくりとスローに誘うのが基本です。着底後、底から10m程度をスローなワンピッチジャークで誘い、アタリがなければ再度底を取り直す動作を繰り返します。ヒットしたら根に潜られないよう、一気にゴリ巻きして底から引き離すことが重要です。
- タチウオ狙い: 都市部の近海でも楽しめ、入門にも最適です。フォール中のアタリが多いため、リアフックが必須で、スローな誘いやただ巻きが有効なことが多いです。
- 中深海ジギング: 水深200m以上を狙い、アカムツ(ノドグロ)などの高級魚がターゲットです。重いジグを使い、フォールを意識したスロージギングが主体となります。
💡5. 釣果を上げるためのポイントと注意点
- 船長のアドバイスは絶対!: 船長はその日の海の状況を最もよく知っています。ジグの重さやカラー、誘うタナなど、指示には素直に従いましょう。
- フッキング(アワセ): アタリがあったら、ラインのたるみを取ってから力強く一度だけ合わせます。何度も合わせると針穴が広がり、バラシの原因になります。
- ファイト(魚とのやり取り): 魚が掛かったら、ロッドを立てすぎないように注意しましょう(破損の原因になります)。ラインとロッドの角度が90度になるように保つと、魚にプレッシャーをかけ続けられ、バラシを防げます。魚が強く引いている時は無理に巻かず、巻ける時に一気に巻き上げるのが基本です。
- こまめな再投入: 同じ場所で誘い続けると魚に見切られます。仕掛けを流しすぎず、こまめに回収・再投入することで、フレッシュな魚にアピールでき、釣果に繋がります。
- 潮を意識する: 潮が動いている時の方が魚の活性は上がります。ジグをシャクった時の重さで潮が効いているか(流れているか)を感じ取れるようになると、釣果は大きく向上します。
🎒6. 必要な持ち物・便利グッズ
必須の持ち物
- タックル一式(ロッド、リール、ライン)
- メタルジグ(船長に指示された重さを中心に複数)
- リーダー、リング類、アシストフック
- ライフジャケット(桜マーク付きのタイプA)
- プライヤー(スプリットリングの開閉やフックを外す際に必須)
- クーラーボックス
- 長靴またはデッキシューズ(滑りにくく防水性の高いもの)
- 飲食物、タオル、酔い止め薬
あると便利なグッズ
- タックルボックス(ドカットやバケットマウスなど、座れる大型のものが便利)
- ラインカッター
- ノッター(PRノットなどを行うための補助器具)
- 締め具(ノットを強く締め込むための道具)
- ナイフ
ジギングはシンプルながら奥深く、大物との出会いが魅力的な釣りです。最初は難しく感じるかもしれませんが、基本をしっかり押さえて挑戦すれば、きっと素晴らしい一匹に出会えるはずです。安全に気をつけて、楽しんでください!